SPECIAL SERIAL 川勝良一監督のサッカーケツ学 02 スタジアム観戦の楽しみ方② 準備の重要性

 東京ヴェルディが目指すサッカーを知るには、指揮を執る川勝良一監督の言葉に耳を傾けるのがいいだろう。指揮官はチームの青写真をどのように思い描いているのだろうか。「ケツさん」の愛称で親しまれる川勝監督のサッカー理論、そして哲学に、少しずつ迫っていく。これを読めば、東京ヴェルディが掲げるサッカーの根幹、そしてコンセプトが見えてくる。

試合中に唯一、指示を送ることが許されている監督は、異なる視点があるのだろうか。サイドライン沿いのテクニカルエリアから川勝監督は何を見ているのか。

「基本的には一緒。だけど、攻撃しているときは、最終ラインの位置やマークを見ている。守備のときはFWの立ち位置や攻撃への準備ができているかを気にしている。攻撃時は守備のこと、守備時は攻撃のこと。常に逆を見ているかもしれないね。球際は放っておいても、みんな緊張感を持ってプレーする。ただし、勝負がつくのは、その先にある。当然、ボールも見ているけれども、それだけじゃない。他には相手のディフェンスラインを見て、FWへのマークが緩ければ、それをハーフタイムの指示で言ったりもする。ボールとは逆の位置、ボールがあってもその周辺のこと。それを注視して、選手たちにはアドバイスしている」

冷静に戦況を見つめ、指揮官はピッチで戦う選手たちに指示を送る。それは状況に応じて目まぐるしく変わっていく。そうした中、川勝監督が試合中に最も選手たちに要求していることは何なのか。

「まずはボールを大切にすることだね。選手たちには常に自分が置かれている状況、情報を知っておけと言っている。ゴールに向けてボールを動かすためには、全体が同時に動かなければならない。それを可能にするには、常に周囲を把握しておかなければならない。だからこそ、これからボールをもらう選手は、常に準備をしていないといけない。他にはランニングのスピードを誤魔化すなということも、いつも言っている。DFにしても、いい守備をするには、スタートする位置が大事になる。サッカーは陸上のように、スタートラインが決まっていて、みんなが同時に走り始めるわけじゃない。だから、どこで守るか、どこで走るか。自分の能力、周囲の状況を見極めて、常に準備しておく。これはしつこいくらいに言っているかな」

川勝が頻繁に口にしたのが、“準備”というキーワードだ。攻撃にしても、守備にしても、味方、相手の状況を把握し、常に最高のスタートを切ることが重要なのだと……。それでこそ東京ヴェルディは、J2でも特異なパスサッカーが体現できるのだ。

「うちは小柄な選手が多いから、少しでも有利になるように、勝てる確率を上げられるように準備できるかなんだよね」

サッカーの醍醐味はやはりゴールにある。その瞬間をスタジアムで感じ取ることはできるのだろうか。東京ヴェルディがゴールを奪う予兆とは、どんなプレーにあるのか。

「テンポよくボールが動いている状況で、ゴールの確率が高い選手が、ボックス(ペナルティーエリア)内にいるときは、単純にゴールが生まれる可能性は高まる。うちが良いときって、全員がイメージを共有して、次々に選手たちが動いているときだから。それを選手たちには大事にしてほしいし、そこでミスを出さないプレーをしてもらいたい。ミスをすれば、流れが変わってしまうこともある。特にしてはいけないのは、イージーミス。2番目は判断ミスというか、やっぱり準備ができていない選手のプレーになる」

ボールを持っている選手に呼応するかのように、周囲の選手たちが次々と動き出していたならば、それは東京ヴェルディがゴールを奪う瞬間だと思って目を凝らすといいだろう。東京ヴェルディのサッカーを、より深く楽しめるはずだ。

<次回つづく>
取材・文/原田大輔
撮影/佐野美樹
text:Daisuke Harada
Photo:Miki Sano
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